川向こうへの向かい方。

近くに暮らす親戚のおとうさんが、
散歩の途中で急に動けなくなったらしい。
親戚のおかあさんが、しょんぼり、そう言って来た。

たまたま、目前が病院だったので、お世話になったという。
大丈夫ー?!と思い、
様子を見にその病院へ駆けつけたら、
親戚のおとうさんは、車いすに座っていた。
医師の簡単な診察のあとの、
処置室へ向かう途中だった。
親戚のおとうさんは、あたしのことが分からなかった。
ぽーっと、していた。
看護師さんに、車椅子を押されながら、
あたしのことを、気にも留めずに、
横をそのまま、素通りしていった。


親戚のおとうさんは、何ヶ月か前も、
散歩の帰り、動けなくなって、道端で尻餅をついていた。
ものすごく太っている人だから、
ちょっとやそっとで、他人がどうこうすることが出来ない。
通りがかりの数人の女性が、お助け下さったそうで、
そのおかげでどうにか自宅まで戻ったという。

親戚のおかあさんは、とても小柄な人なので、
確実に、ひとりではまったくどうにも出来ない。
だから、その一件以来、おとうさんの外出の扱いには、
割と慎重になっていた。
しかし。
ぜんぜん動かないのも良くなかろう。
外出しなさ過ぎるのも、いけないだろう。
そう思って、ちょっとした買い物に、
散歩がてらに連れ出したら、こんなことになった、と言っていた。

難しい…
本当に、難しい問題だと思う。
うんとお金持ちとかなら、
個人的に老人介護警護、みたいな人でも雇えるだろうけど。
一般家庭だと、やはり連れ合いが
始終目を光らせるほか、ない。

親戚のおとうさんは、体はすごく堅牢。骨も強靭。
内臓疾患もなく、血圧だってばっちり安定。
若干の不整脈はあるらしいけど、
年齢はもう、90歳近くだから、そのくらい当然だと思う。

年齢、90歳近く

このどんどん日増しに増すばかりだという、
<ぼんやり>も、もう90年も生きて来てたら、
ある程度はしょうがないものだ、と医者は言うらしい。
そりゃそうだろうなあと、思う。
でも、その”ある程度”の線引きって。
それも、すごく難しいと思う。
誰も、90年もまだ、生きてないから。
分かるわけがない。


親戚のおとうさんの話を、見聞きしていると、
すごく不謹慎かもしれないけど、
川向こうへの向かい方、について、思うようになった。

このおとうさんは、
いったいいつ、どんなふうに、川向こうへゆくんだろうか、と。
そんじょそこらの若者より、内臓は本当に
すこぶるつきの優良らしい。
ただ一点、脳だけが。
脳だけが、圧倒的に、衰えてる。
だから、というか。
だったら、いったい、どんなふうに。
どんなかたちで、川向こうへ旅立つんだろう。

あたしの母に、そう話してみた。
ひとっていったい、どんなふうになるの。

すると母自身、それについて日々思ってる、と言った。
「私の終焉って、いったいどんななのかしらって思う。
でも、だいたいおっちょこちょいだからさ、
転んで大きな骨折でもして、入院しちゃって。
風邪引いて、合併症で肺炎なんか引き起こして、オシマイ。
そんな感じかなあとかって、ことは、思ってるんだけど。
でも、それでも実のところでは、分かってないの。
いったい私は、どんなふうに、彼岸を渡るのかなあって」

かの、石原慎太郎氏も、どこかのインタビューで
ご自身のこの世の去り方が、まだ想像出来ないと言われていた、と母。
「いろんな人生を見て来た人ですら、そうなのねえって思ったわ」と、母。


門松は
冥土の旅の一里塚
めでたくもありめでたくもなし

                   一休宗純


街に門松が、飾られてた。
川向こうへの道のりのことを、ぼーっと。
思うでもなく、思いながら、眺めた。



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2016-12-29 : よしなし雑記 : コメント : 0 :
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2013年10月、片側顔面痙攣で開頭手術を受けました。煩わしかった痙攣から解放された☆と思いきや、術後約1年数ヵ月後、また魔の痙攣が始まりました…
この症状について、さらには病というモノなどについて、さらにさらにはいろいろよしなにごとを書き綴りたいと思います。

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